奴隷制度と殖民地支配

 さらに素朴な疑問を続けてみよう。
 米国をはじめ西欧社会、キリスト教文化圏では、過去、組織的な奴隷制度が行われた。アフリカ人を誘拐し売買し、奴隷として何百年間も使用してきたのだ。
 日本でも若い女性が郭へ売られたり、アイヌや朝鮮人や中国人への差別、厳しい身分制度といったものは存在したが、西欧社会に見られたほどの組織的な奴隷制度は、歴史上一度も存在していない。
 むろん、日本人も西欧人も同じ人間であることに変わりはない。
 ―では、同じ人間であるにも関わらず、この違いはどこから来たのか? あるいは、たまたまそうなっただけのなのだろうか? 彼我の違いは、五十歩百歩に過ぎないのか?

 「鉄砲を捨てた日本人@ 」という本によれば、『16世紀後半に日本人が合戦に用いた鉄砲数は、当時のヨーロッパのどの国が持っていた鉄砲の数よりも多かったA』のだという。当時、来日したイタリア商人は日本の武器輸出に関して、「攻撃用、防御用を問わず、ありとあらゆる武器があり、この国は世界で、最大の武器供給国だと思うB 」と言ったそうだ。
 つまり、当時の日本は世界最大ともいえる軍事力を持っていた。そして世界最強国の日本は鎖国をして、250年間の平和を享受した。
 この間に武道は大いに栄えたが、鉄砲は「卑怯な飛び道具」として廃れて行った。いわば日本国内で大規模な軍縮が行われた。
 著者のノエル・ペリン氏は、『人類はいま核兵器をコントロールしようと努力しているのですから、日本の示してくれた歴史的実験は、これを励みとして全世界が見習うべき模範たるものですC 』とまで主張している。
 日本が鉄砲を捨てている間、ヨーロッパは全世界を侵略した。鉄砲はライフル、機関銃へと進化を続け、彼らは数え切れない有色人種の命を奪い、植民地として支配し、巨万の富を奪った。
 同じ人間同士だというのに、この違いはどこから来たのか? ―それとも、これもたまたまだったのだろうか?


@ノエル・ペリン著 川勝平太訳 中公文庫
A同書29ページより引用
B同書39ページより引用。
C同書8ページより引用。
P.8

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