| 沈黙の声 |
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| 東郷 潤 |
| 〔ふりがな〕 ちんもくの こえ とうごう じゅん |
P.1
| 強い奴と弱い奴が戦っています。 |
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| 強い奴は、なんだか楽しそうですね。でも弱い奴は必死です。文字通り命がけです。 |
| 〔ふりがな〕 つよいやつと よわいやつが たたかっています。 つよいやつは、なんだか たのしそうですね。でもよわいやつは ひっしです。もじどおり いのちがけです。 |
P.2
| ・・・ところで、ふたりはなぜ戦っているのでしょう？ ちょっと想像してみましょう。 |
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| 〔ふりがな〕 ・・・ところで、ふたりは なぜ たたかっているのでしょう？ ちょっと そうぞうしてみましょう。 |
P.3
| 強い奴が戦う動機を想像することは簡単ですね。なぜって強い奴は負けることはないので、リスクは０。 |
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| だからどんなにつまらないことでも、十分に戦う動機となりうるのです。 |
| 〔ふりがな〕 つよいやつが たたかう どうきを そうぞうすることは かんたんですね。 なぜってつよい やつは まけることはないので、りすくは０。 だから どんなにつまらないことでも、じゅうぶんに たたかう どうきとなりうるのです。 |
| 〔注〕 「つまらないことでも戦いの動機になる」とは言っていますが、「強い奴が戦う動機は必ずつまらないことだ」と主張しているわけではありません。 念のため。 |
P.3-2
| たとえば、自分を正義の味方だと信じたいとか。 …理由はどうあれ、弱い奴を悪人だと思って戦えば、自分を正義の味方だと思えます。 それって強い奴の虚栄心をくすぐるかも。地獄に落ちる恐怖をやわらげてくれるかも。 |
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| 〔ふりがな〕 たとえば、じぶんを せいぎのみかただと しんじたいとか。 …りゆうは どうあれ、よわいやつを あくにんだとおもって たたかえば、じぶんを せいぎの みかただと おもえます。それって つよいやつの きょえいしんを くすぐるかも。じごくに おちる きょうふを やわらげてくれるかも。 おれは せいぎの みかただ！ |
| 〔注〕 地獄に落ちる恐怖というのは、心理的な話です。 地獄の有無に関して、何らかの主張をしているわけではありません。 |
P.4
| あるいは単純に、ストレス解消とか。 |
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| あるいは、弱い奴の恋人を奪うとか？ 無理やり自分の歌を聞かせるとか？ |
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| 〔ふりがな〕 あるいは たんじゅんに、すとれす かいしょうとか。 いやあ、すっとするなあ！ あるいは、よわいやつの こいびとを うばうとか？ むりやり じぶんのうたを きかせるとか？ こら、おれさまのうたを おじょうずですね、といえ！ |
P.4-2
| あるいは、弱い奴のお金や財産を奪うとか？ 強い奴にしてみれば、戦うことは究極のローリスク・ハイリターン、濡れ手に粟の金儲けなのです。 |
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| 〔ふりがな〕 あるいは、よわいやつの おかねや ざいさんを うばうとか？ つよいやつに してみれば、 たたかうことは きゅうきょくの ろーりすく・はいりたーん、ぬれてにあわの かねもうけ なのです。 おまえ、かね もってるなあ！ か、かえせ！ |
P.5
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問題なのは、弱い奴が戦う動機です。弱い奴が勝つ可能性はありません。 普通に考えれば、何が何でも戦いたくは無いでしょう。戦えば、自分の財産も命も自由も全てを奪われてしまうのですから。 |
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| 〔ふりがな〕 もんだいなのは、よわいやつが たたかうどうきです。よわいやつが かつかのうせいは ありません。ふつうに かんがえれば、なにがなんでも たたかいたくは ないでしょう。たたかえば、じぶんの ざいさんも いのちも じゆうも すべてを うばわれてしまうのですから。 |
P.6
| では弱い奴が戦う動機は何でしょう？ どうせ負けるのなら、なぜ言われるがまま、全てを差し出し服従しようとはしないのでしょう？ |
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| 〔ふりがな〕 ではよわいやつが たたかう どうきは なんでしょう？ どうせ まけるのなら、なぜいわれるがまま、すべてを さしだし ふくじゅうしようとは しないのでしょう？ |
P.6-2
| 弱い奴が戦う動機は何にせよ、それはきっと自分の命や財産を守ることよりも、大切なことなのでしょう。 |
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| あ、強い奴が勝ちましたね。当たり前ですけど。 |
| 〔ふりがな〕 よわいやつが たたかう どうきはなんにせよ、それはきっと じぶんの いのちや ざいさんを まもることよりも、たいせつなことなのでしょう。 あ、つよいやつが かちましたね。あたりまえですけど。 |
P.7
| これで弱い奴は、おしまいです。 |
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| 〔ふりがな〕 これで よわい やつは、おしまいです。 勝ったぞ！ |
| 〔注〕
このシーンは絵本の表現上の必要性によるもので、以下のような聖書の記述とは無関係です。念のため。
〔ユシュア１０：２２-２６〕ヨシュアは命じた。「洞穴の入り口を開き、あの五人の王たちを洞穴からわたしの前に引き出せ。」 彼らはそのとおりにし、エルサレム、ヘブロン、ヤルムト、ラキシュ、エグロンの五人の王を洞穴から引き出した。 五人の王がユシュアの前に引き出されると、ユシュアはイスラエルのすべての人々を呼び寄せ、彼と共に戦った兵士の指揮官たちに、 「ここに来て彼らの首を踏みつけよ」と命じた。 彼らは来て、王たちの首を踏みつけた。ユシュアは言った。 「恐れてはならない。おののいてはならない。強く雄々しくあれ。あなたたちが戦う敵に対して主はこのようになさる。」 ユシュアはその後、彼らを打ち殺し、五本の木にかけ、夕方までさらしておいた。 |
P.8
| ああそれにしても、弱い奴は、なぜ負けると分かっていて戦ったのでしょう？ そこには、どれほどの事情、思いがあったのでしょう？ |
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| 〔ふりがな〕 ああそれにしても、よわいやつは、なぜまけると わかっていて たたかったのでしょう？ そこには、どれほどの じじょう、おもいがあったのでしょう？ |
P.9
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| 〔ふりがな〕 しょうしゃの きょうせいは せかいにひびき、みみをふさいでもきこえてくる。 でもいうことは、いつも おなじだ。・・・じぶんが ただしく あいてが わるいと。 |
P.10
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| 〔ふりがな〕 あなたの こえは きこえない… |
P.11
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あとがき -絵本「沈黙の声」 |
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もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です（商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます）。 また下記ＷＥＢからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
| ©Jun Togo 2012 |
P.12
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