
予防できるよ |
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東郷 潤 |
〔ふりがな〕 よぼう できるよ とうごう じゅん |
〔解説〕予防できるよ -絵本集「怒りと憎しみ」より
前作では怒りが持つ「痛みの共有」効果を描きました。本作ではそれを一歩進めて、怒りが持つ「痛みの予防」効果を描きます。
もし何か痛みが犯罪から発生したものだとするならば、当たり前のことですが、痛みを予防することは犯罪を予防することにもつながります。
さてここで「罰と恐怖の絵本集」を思い出して頂きたいのです。
善悪が支配する社会で、犯罪予防・犯罪撲滅は、主に刑罰に頼って行われます。言葉を変えれば、罰と恐怖で人間行動を管理しています。
そしてそこには深刻で膨大な副作用が存在します。「罰と恐怖の絵本集」では20本を超える絵本で、そうした副作用・危険をご紹介いたしました。
しかしながら、「じゃ、どうするんだ?」という解決策は示してはおりません。つまり、「罰に頼る弊害はよくわかった。じゃあ、どうするんだ?
今の社会で罰が無くなったら大混乱だろう。いくら危険・副作用があろうと、罰を使い続けるしか無いじゃないか」といった読者が持つであろう、当然の疑問に答えてはおりません。
つまり本作「予防できるよ」は、罰と恐怖による人間管理に代わるもの、「じゃ、どうするんだ?」に対する回答の一つという位置づけになります。 とはいえ「怒り」は、無条件に罰を代替できるわけではありません。全てを代替できるわけでもありません。魔法のような近道があるわけではないのです。
罰と恐怖の支配は、善悪が生んだ人々の心・社会の歪みを解きほぐし、個々の犯罪の原因を一つ一つ地道に究明し解決していくことで減らすことが出来ます。
いうまでもなく、心や社会の歪みを一朝一夕で無くすことはできません。犯罪の原因の全てを、一瞬で知ることも解決することも出来ません。
けれど、やればやっただけ、解決すれば解決しただけ、罰と恐怖の支配を減らすことが出来るでしょう。
この絵本も、そのための真に小さな一歩だと考えています。