| 僕はイジメっ子？ |
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| 東郷 潤 |
| 〔ふりがな〕 ぼくは いじめっこ？ とうごう じゅん |
P.1
| 新しいクラスで、僕は前の席の奴に悪戯をした。 |
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| 友達になりたかったんだ。 |
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| 〔ふりがな〕 あたらしい くらすで、ぼくは まえのせきのやつに いたずらをした。 ねえ、ちょっと ともだちに なりたかったんだ。 いたい！ |
P.2
| 僕はあいつが怒ると思ってた。そしたら僕が謝って二人で笑って、友達になれるって。 |
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| でもなぜかあいつは怒らなかった。 |
| 〔ふりがな〕 ぼくは あいつが おこると おもってた。 そしたら ぼくが あやまって ふたりでわらって、ともだちになれるって。 こら！ なにをする！ うわあ、ごめんごめん！ でもなぜか あいつは おこらなかった。 |
P.3
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| 〔ふりがな〕 え？ むし！？ このこ、わるいこだ。もしおこったら ぼくも わるいこになる。 むしが いちばん！ |
P.4
| なぜだろう？ 僕の胸が針で刺されたように痛くなった。 |
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〔参考絵本〕 怒らないことで不信を示す心理については、絵本「怒らない不信」をご参照下さい。 〔ふりがな〕 なぜだろう？ ぼくのむねが はりで さされたように いたくなった。 ともだちが ほしくて、ちょっと ふざけただけなのに！！ |
P.5
| 胸の痛みをなんとかしたくて、僕は、またあいつにふざけてみた。後ろから髪の毛を一本抜いてみたんだ。今度こそ怒るはず。 |
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| 怒られたらすぐに謝まるんだ。だって僕は友達になりたいだけだもの。 |
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〔ふりがな〕 むねのいたみを なんとかしたくて、ぼくは、またあいつに ふざけてみた。うしろから かみのけを いっぽんぬいてみたんだ。こんどこそおこるはず。 たのむから おこって！ おこられたら すぐに あやままるんだ。だってぼくは ともだちになりたいだけだもの。 |
P.6
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| 胸に針が、もっと深く突き刺さった。 |
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〔ふりがな〕 え？ やっぱりわるい いじめっこだ こわい！ むねにはりが、もっとふかく つきささった。 |
P.7
| それからしばらくして、先生がお巡りさんを連れて来た。 |
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〔ふりがな〕 それからしばらくして、せんせいがおまわりさんをつれてきた。 みなさん、きょうは、けいさつの かたから だいじなおはなしです！ |
P.8
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〔注〕ポスターの電話番号もメールも架空のものです。なおこのポスターの絵は、絵本「正義の味方」からです。
〔ふりがな〕 いじめは はんざい！ すぐに つうほうしてね。 われわれ せいぎのみかたが ぜったいに ゆるさないから いじめは わるいこと！ ぜったいに ゆるさない！ けいさつ いじめ そうだんまどぐち でんわ: 03-3580-49xx めーる: |
P.9
| 僕は急に怖くなった。 |
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| あいつ、イジメられたって通報するかも。僕はすぐにあいつと話さなければいけない！「友達になりたかっただけだ」って。 |
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〔参考絵本集〕 罰の恐怖とその副作用については、「罰と恐怖の絵本集」の中で様々な角度から取り上げていますのでご参照下さい。 〔ふりがな〕 ぼくは きゅうに こわくなった。 きょうしつに ぽすたー はっておくよ。 あいつ、いじめられたって つうほうするかも。ぼくは すぐにあいつと はなさなければいけない！「ともだちに なりたかっただけだ」って。 |
P.10
| 休み時間、僕はあいつに話しかけた。 |
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〔参考絵本〕 善と悪に分ける心の癖については絵本「魔法のメガネ」はじめ、何度となく平和の絵本で取り上げています。 〔ふりがな〕 やすみじかん、ぼくはあいつにはなしかけた。 なあ、ちょっと はなしたいんだ いや、いそがしいから たいへん！ わるいこが はなしかけてきた！ |
P.11
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| 胸に刺さった針がまた痛んだ。不安感も強くなった。 |
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〔ふりがな〕 まてよ！ むねにささった はりが またいたんだ。ふあんかんも つよくなった。 |
P.12
| その後、僕は何度かあいつを追いかけ捕まえた。 |
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| こいつ、嘘をついている。 |
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〔ふりがな〕 そのご、ぼくは なんどか あいつをおいかけ つかまえた。 なんで にげんるんだよ にげてないよ おまえ、おれのこと さけてるだろ？ まさか！ こいつ、うそをついている。 |
P.13
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| つい強く怒ってしまった。 |
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〔ふりがな〕 うそを つくな！ それって わるいこと なんだぞ！ ひっ！ つい つよく おこってしまった。 |
P.14
| あいつは泣いて逃げて行った。 |
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| 大変！ ど、どうしよう！？ |
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〔ふりがな〕 あいつは ないて にげていった。 うぇ～ん！ え？ まてよ！ なくこと ないだろ！？ たいへん！ ど、どうしよう！？ |
P.15
| 不安に駆られた僕はその後、またあいつを捕まえた。 |
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| 彼はやっぱり嘘をつく。どうすれば嘘をやめさせられるだろう？ |
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〔ふりがな〕 ふあんに かられたぼくは そのご、またあいつを つかまえた。 おれのこと いじめっこだなんて おもってないよな。 おもってません。 いたずらしたのは ともだちに なるためだぞ おこったのは おまえが うそついたからだぞ わかってます かれは やっぱりうそをつく。どうすれば うそをやめさせられるだろう？ |
P.16
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| どうしても彼は嘘をやめない。根っから悪い嘘つきなのか？ |
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〔ふりがな〕 おれの めをみて ほんとうのことを いえ おれのこと いじめっこだと おもってるんだろ？ い、いえ どうしても かれは うそをやめない。ねっから わるい うそつきなのか？ |
P.17
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〔ふりがな〕 なら だれにもいうなよ。おれに いじめられたなんて もし いったら わかってんだろうな！ は、はい |
P.18
| その後、彼はいつも僕に怯え、僕を避けるようになった。 |
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| もう仲良くはなれない。出来るのは通報されないようにもっと怖がらせることだけ。他にどうしようもない。 |
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〔ふりがな〕 そのご、かれは いつも ぼくにおびえ、ぼくを さけるようになった。 ぼくは ともだちに なりたかっただけなのに。ぼくは ちっとも わるくないのに ああ、はらたつ！ もう なかよくは なれない。できるのは つうほうされないように もっとこわがらせることだけ。ほかに どうしようもない。 |
P.19
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善悪はイジメを 生みます。 |
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〔筆者注〕 ここでいう「善悪」は、法律・ルール・マナー・道徳といった意味ではありません。筆者は無法地帯を勧めているのではありません。 平和の絵本の読者の方ならお分かりになると思いますが、ここでいう「善悪」は、1)二分類を利用した錯覚作成のメカニズムであり、2)条件反射のような心の癖に支えられた命令発生のメカニズムであり、3)罰と恐怖を利用した人間支配のメカニズムのことです。 それぞれ以下の絵本をご参照ください。1)については、 絵本「魔法のメガネ」、 絵本「子供を犯罪者に育てる方法」、 絵本「教育マシン」。 2)の条件反射については、 絵本「パブロフの犬」。 善悪が命令であることに関しては、 絵本「本当に悪いのは誰？」。3)については 「罰と恐怖に関する絵本集」。 〔ふりがな〕 わるいのは おまえだからな！ つうほうするなよ は、はい |
P.20
| あとがき |
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もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。
本絵本は、自由にコピーして下さって結構です（商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます）。 また下記ＷＥＢからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
| ©Jun Togo 2019 |
P.21
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（絵本集「怒りと憎しみ」ではありません）
⇒絵本集「怒りと憎しみ」
平和の絵本
世界平和の絵本集（WEBトップ頁）クイックツアー-QT
お母様へ（子供を心の病から守る）-QT 悩み落ち込む方へ-QT イジメ・虐待問題-QT 政治・社会問題-QT 戦争と平和-QT 国を憂う方へ-QT
絵本集
本当に悪いのは誰？ 世界を巡る攻撃命令 正しいことって何？ 攻撃命令無制限
殴れるよ 見下せるよ 誤魔化せるよ
良い子にならなきゃ(地獄の恐怖) やるかやられるか パブロフの犬(条件反射の心理学)
子供を犯罪者に(少年犯罪の原因) 教育マシン(子供の教育に) どっちだ？(孤独の心理)
悪いことは悪い 二重に隠れて 大事な議論 正義の味方
サングラス(理想主義の罠) 出ていて引っ込んでいるもの 認識のパターン（絵本集）
終わりの無い物語(憎しみの連鎖) 私は悪い人間です(罪と祈り)
魔法のメガネ(いじめや戦争) 見えない危険(軍拡の心理) 怯える人々(恐怖で狂暴に) 負けるものか(意志が弱い方へ)
善悪と愛憎 愛と嘘(嘘と偽善) 愛と敵(虐待へ) 愛を命令しないで(オムニバス絵本)
神と善悪 悪人さん、ありがとう 失敗し続ける方法(オムニバス絵本) バカ自慢-絵本集 怒りと憎しみ -絵本集
悪と罰(罰の心理) ある星の飲酒運転(酒酔い運転防止) 罰とイジメと自殺のロンド 罰と恐怖(絵本集)
愛する人が殺されたら―復讐の相手 復讐の相手-Ⅱ 想像という現実(連作絵本) 嫌な気持ちになる絵本 それぞれの深い望み
嵐と湖(心の悩みへ) 待って(焦りと不安へ) 国破れて
生と死（絵本集） お金と経済（絵本集） 民主主義（絵本集）
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