| 差別と現実逃避 |
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| 東郷 潤 |
| 〔ふりがな〕 さべつと げんじつとうひ とうごう じゅん |
P.1
| 「異教徒は悪魔だ」と教えている、遠い宇宙のある星のお話です。 |
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| 〔注〕 この設定に関しては、絵本「宇宙の異教徒」をご参照ください。 |
| 〔ふりがな〕 「いきょうとはあくまだ」とおしえている、とおいうちゅうのあるほしのおはなしです。 わたしたちがしんじるかみさまとちがうかみさまをしんじているひとたちは、あくまです！ |
P.2
| ある日彼らは初対面の異民族を悪魔だと誤解し殺してしまいました。 …けれど一時の熱狂が覚めると、犠牲者が悪魔などでは無いと彼らはすぐに気づきました。だって本物の悪魔にしては弱すぎますもの。 |
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| 〔注〕 なぜ殺したのかについては、絵本「不安な初対面」をご参照ください。 このシーンは、「不安な初対面」から取ったものです。 |
| 〔ふりがな〕 あるひ かれらは しょたいめんの いみんぞく をあくまだ とごかいし ころしてしまいました。 …けれど いちじの ねっきょうが さめれば、かれらにも ぎせいしゃが あくまなどでは なかったことは すぐにわかるでしょう。 だって ほんものの あくまにしては よわすぎますもの。 あくまどもめ。しねば なにもできねえだろう！ あれれ？ もう しんじゃったよ |
P.3
| さてさて困りましたね。 悪魔をやっつければ大満足かもしれませんが、意味もなく人を殺せばとても嫌な気持ちになるものです。 |
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| 〔注〕 この心理に関しては、絵本「嫌な気持ちになる絵本」をご参照ください。 |
| 〔ふりがな〕 さてさて こまりましたね。あくまを やっつければ だいまんぞく かもしれませんが、いみもな くひとを ころせば とてもいやなきもちに なるでしょう。 ええ！？ もしかしてこれは おれたちへの おくりものだったのか！？ |
P.4
| その上、もし彼らが人殺しを悪いことだと思っていれば、彼らは悪いことをしたことになってしまいます。 彼らが地獄を信じていれば、地獄に落ちると思うかも・・・ |
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| 〔注〕 地獄の有無について一切主張するものではありません。 なお地獄の恐怖が人間心理に与える影響については 絵本「良い子にならなきゃ」でも取り上げています。 |
| 〔ふりがな〕 そのうえ、もしかれらが ひとごろしを わるいことだと おもっていれば、かれらは わるいことをしたことに なってしまいます。 かれらが じごくをしんじていれば、じごくにおちると おもうかも・・・ たいへんなことを してしまった！ ぼくらは ひとごろしだ！ ぼくらは あくにんになってしまった！ |
P.5
| さて現実がとても辛い時、人は現実逃避をすることがありますね。それは個人に限るものではありません。 複数の人々が協力し想像を作り上げ、それを現実だと思い込み、本物の現実を否定することもあるのです。 |
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| この〇〇に、彼らが作った「想像」が入ります。 |
| 〔参考絵本〕 絵本「土の中」でも現実を否定する心理を描いています。 |
| 〔ふりがな〕 さてげんじつが とてもつらいとき、ひとは げんじつとうひを することがありますね。それはこじんに かぎるものではありません。 ふくすうのひとびとが きょうりょくし そうぞうをつくりあげ、それを げんじつだとおもいこみ、ほんもの のげんじつを ひていすることもあるのです。 ちがう！ おれたちは ひとごろしなんかじゃない！ だって、○○なんだから！ |
P.6
| 〇〇はただの想像なので、多種多様なものとなりえます。たとえば次のようなものかもしれません。 |
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| 〔注〕 読者の中には、「イエスは神の子であるとの信仰を持つ者でなければ，いったいだれが世を征服する者でしょうか。(ヨハネ第一5:5)」 といった聖書の教えを連想される方もいらっしゃるかも知れませんが、これは地球の話ではありません。聖書とは無関係です。念のため。 |
| 〔ふりがな〕 ○○は ただのそうぞうなので、たしゅたようなものと なりえます。たとえば つぎのようなもの かもしれません。 だって、やつらは あくにん なんだから！ だって、せかいせいふくは めいはくな かみのいし なんだから！ |
P.7
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| 〔ふりがな〕 だって やつらは にんげんじゃない、ただのどうぶつ なんだから！ だって、やつらは れっとうじんしゅ なんだから！ |
P.8
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| 人間には無限の想像力があるので、いくらでも想像を作り出すことができますね。 こうして作った想像を駆使して、●自分たちの行為を正当化し●本物の現実を否定するのです。 |
| 〔参考絵本〕 多種多様な妄想を作り出すという心理は、絵本「愛に飢えて」でも取り上げています。 |
| 〔ふりがな〕 だって、やばんじんの ぶんめいかに たしょうのぎせいは とうぜん なんだから！ だって、このよは じゃくにくきょうしょく。よわいやつは ほろびるうんめい なんだから！ にんげんには むげんのそうぞうりょくが あるので、いくらでも そうぞうを つくりだすことができますね。 こうして つくったそうぞうを くしして、●じぶんたちの こういを せいとうかし●ほんものの げんじつを ひていするのです。 |
P.9
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| 〔ふりがな〕 いやあ、こううんにも だれもいない おおきなとちを てにいれることができたよ。 あ、あいつらは ただのさるだから。 |
P.10
| さて、人は認識に基づき行動します。 |
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| もし想像を現実だと錯覚すれば、それ以降、その人はその誤った認識に基づいて行動するでしょう。 |
| 〔注〕 このシーンは絵本「水と洗剤」に登場したものです。 「水と洗剤」では、たとえそれが結果的に損なことであっても、人は認識に基づいて行動することを描いています。ご参照ください。 |
| 〔ふりがな〕 さて、ひとは にんしきにもとづき こうどうします。 ふろに はいろう みずを のみましょう たいらなところを あるこう もしそうぞうを げんじつだと さっかくすれば、それいこう、そのひとは そのあやまった にんしきに もとづいて こうどうするでしょう。 |
P.11
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| もし、他民族という人間をただの動物だと想像し／錯覚し／信じたなら、その後ももちろん、その誤った認識に基づいて行動することとなります。その認識が変わらなければ、ずっと… |
| 〔ふりがな〕 もし、たみんぞくという にんげんを ただのどうぶつだと そうぞうし／さっかくし／しんじたなら、 そのごも もちろん、そのあやまった にんしきに もとづいて こうどうすることと なります。そのにんしきが かわらなければ、ずっと・・・ |
P.11-2
| つまり、差別が固定化します。 |
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| 〔ふりがな〕 つまり、さべつがこていかします。 さるのくせに、にんげんに さからうな！ きゃ～！！ |
P.12
あとがき |
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| ©Jun Togo 2013 |
P.13
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