スマホ用絵本「日本独立の選択」

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和を地球へ-癒しの絵本で愛と平和を世界へ

贈る癒しの絵本で和を地球へ。世界へ愛と平和を
日本独立の選択
―平成27年秋―
星条旗と日本
東郷 潤
P.1

日本の現状

 日本は本当に独立国なのでしょうか?
サンフランシスコ平和条約の絵(イラスト)
 1952年発効のサンフランシスコ平和条約で日本は表面的には確かに独立しました。
P.2

 では実質的/軍事的にはどうでしょう? 以下の図は、日本にある在日米軍基地・施設です。全国計 131施設・区域 1,024,401千平方メートル、 これは東京ドーム2万個超の広さです。(画像をクリックすると大きくなります)
在日米軍基地・施設の絵(イラスト)

〔注〕
●この数字には、日米地位協定第2条第4項(b)に基づき、米軍が一定の期間を限って使用している施設及び区域を含みます(青字表示部分)。
●在日米軍施設・区域(専用施設)の面積は、306,226千平方メートル。東京ドーム換算で6,550個弱となります(計算式は306,226,000÷46,755=約6,550)。
●情報ソースは 防衛省HPの「在日米軍施設・区域別一覧」および「在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積」から(平成27年10月時点)。
●なお 一定期間の使用についての説明は web頁の注意書き追記へ
P.3

 首都圏の空は、その大部分が米軍の管制下です。 横田空域は1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)に及んでいます。
横田空域の絵(イラスト)
 これで独立国と言えるでしょうか。僕にはそうは見えません。 日本は軍事基地に占領された、いわば米国の保護国ではないでしょうか。

〔注〕
●参照 首都圏の空域について
●日本が独立国ではないという実態に関しては、 web頁の追記へ
P.4

 もちろん、保護国であることは「悪」ではありません。 日本人が特に選択をしなければ(=選択をしないという選択)、これからもこの状態は続いていくことでしょう。
▼今後とも米国の保護国であり続ける。    -選択1
 さてあなたがもし日本国のリーダーだったらと想像してみてください。 政治家に限らず、最高裁判事でも大メディアの社長でも検事総長でも事務次官でも、日本国をまとめ導き、意思決定をするような立場だと。  ・・・そんなあなたは、目の前に米国の軍事基地があって米国から何か要求されたとき、断ることができますか? 
P.5

強い奴に命令されたという絵(イラスト)
 ・・・もちろん、出来るでしょう。何しろあなたはとても勇敢な方なのですから。 でも日本のリーダーたちの中には、あまり勇敢ではない方もいるかも知れません。
強い奴の命令に従うという絵(イラスト)

この絵は「負ける喧嘩」から。
P.5-2

 米国には一切そんな気持ちが無くても、首都圏を囲む軍事基地を怖がって、つい心にもないことをしてしまう、そんな臆病なリーダーの方だって、中にはいらっしゃるかもしれませんね。

日本の米国化

 さて日本の様々な分野のリーダーたちが在日米軍を怖がって、米国の言いなりになったり米国のご機嫌取りをしたり 、そんな悲しいケースを想像してみましょう。きっと日本の米国化という圧力が生まれるのではないでしょうか。 社会・システム・道徳・宗教・法律・言語、食料、医療、教育など、それはあらゆる分野を含むでしょう。
ハロウィンの絵(イラスト)

[注] 
●他国の基地を怖がって言いなりになったり、ご機嫌取りをしたりする心理については絵本「銃口の前」をご参照ください。
●「米国には一切そんな気持ちが無くても」と書きましたが、その逆の場合が無いと主張するものではありません。
P.6

 もちろん米国の方が、日本よりもはるかに優れている分野はたくさんありますね!
競争の絵(イラスト)
 一方であまり米国のマネをしたくないこともあるでしょう。
銃の打ち方を教えているという絵(イラスト)

[注] 銃社会の善悪について主張するものではありません。
P.7

 米国化の圧力は(米国が積極的に望まなくても)、日本が米国の保護国であり、米国にゴマをすりたい日本のリーダーがいれば、いつでも発生するかもですね。 そこで、こんな選択肢が生まれます。
▼日本を進んで米国化させるのか・させないのか。どの分野を米国化し、どの分野に関しては米国化の圧力に抵抗するのか。-選択1のA
善悪のメガネを壊す絵(イラスト)

[注]
●この絵は、絵本「国破れて」から。
●抵抗といってもそこには様々な選択があります。例えば日本の米国化に命がけで抵抗するのか、職を賭して抵抗するのか、単に匿名のSNSで抵抗意見を述べるのかなど。
P.8

日本の国益

 悲しい想像を続けます。 ●もし米国が自国の国益を優先し、●日本のリーダーたちが臆病であれば(ゴマをすりたければ)、 米国の国益は、日本の国益に優先されてしまうでしょう
様々な国益に関係する絵(イラスト)
 保護国の身分で国益が犠牲になるのは、ある程度、仕方が無いことかも知れません。 それでも我々日本人が自分たちの伝統・文化・生活を守りたければ、次の選択肢を意識する必要があるでしょう。

[注]
●この絵は「誰がための競争」からアレンジしたものです。
●抵抗や妥協の方法・程度について様々な選択肢があることは、前頁の注の通りです。
P.9


▼どの分野に関しては、米国や臆病なリーダーたちからの圧力に抵抗し国益を守り、どの分野に関しては妥協するのか。  -選択1のB

戦争協力

 戦争に関しても想像してみましょう。米国は建国の過程も含めて、実に多くの戦争を行なってきています。
 ●もし米国が日本の戦争参加を望み、●日本のリーダーたちが臆病であれば(ゴマをすりたければ)、 米国の戦争への参加圧力が高まるでしょう。

[注]
●米国に限らず、紛争当事者が「正義の為に悪と戦っている」という意識を持っている場合、紛争への参加圧力はとても高くなるものです。 その圧力に抵抗することは、文字通り命がけの選択となるかもしれません。 絵本「やるか・やられるか」をご参照下さい。
●米国の過去の戦争についてはアメリカの戦争と外交政策 をご参照ください。
P.10

自衛隊の給油活動の絵(イラスト)
 そこにはこんな選択肢がありますね。
▼米国の戦争に、拒否も含めて、日本はどれだけ積極的に協力するのか。参戦の原則、判断をどうするのか。 -選択1のC

[注]
●米軍への給油活動の善悪を主張するものではありません。
P.10-2

日本の現状を変更する

 米国は現時点で軍事的には世界最強国です。けれど永遠に最強国であるという保証はありません。 また米国への反感が強まれば強まるほど、米国の一部と目される日本がテロなどの攻撃対象となる危険も高まるでしょう。

 つまり、米国の保護国であり続けることにはマイナス面もありそうです。 それを思うと米国の保護国をやめる選択も浮上しますね。ここで保護国をやめる2つの選択肢を示しましょう。 最初の選択肢です。

▼日本国をアメリカ合衆国51番目の州とする。-選択2
P.11


星条旗の中に有る、日の丸の絵(イラスト)
 日本人に米国の選挙権はなく在日米軍を日本人がコントロールすることは出来ません。 そこで在日米軍を自国の軍隊にするために日本を米国にしてしまえ、ということです。

 こうすれば気に入らないことがあれば有権者として米国議会に陳情することができます。 米軍兵士にレイプされれば米国民として訴えることも出来ます。

P.11-2

 とはいえ、この選択肢の実現可能性は(将来、日本が今以上に米国化すれば別ですが)現時点では低いでしょう。

 日本人が米国民となれば、米国の投票権を持つ人間が1億人プラスされることとなり、米国の政治状況は大いに変わってしまいます。 たとえ日本人が望んでも米国から拒絶される可能性が高いのです。

 そしてもちろん、日本国の廃止を望まない日本人の方が今はまだ圧倒的に多いでしょう。 そこで米国の保護国をやめる場合の、もう一つの選択肢です。

▼在日米軍基地を返還してもらい、実質的/軍事的に独立する。  -選択3
P.12

日本地図と日の丸の絵(イラスト)
 しかし、これも簡単ではありません。 そもそもどうやって在日米軍基地を無くすのか/米軍基地が撤退した後の国防をどうするのか、よくよく考える必要があるのです。

 ではまず基地を無くすために、どのような選択肢があるのか考えてみましょう。さあ、どうすれば在日米軍基地をなくせますか?

P.12-2

在日米軍基地の返還の方法

 まず誰でもすぐに思いつく方法です。
▼在日米軍基地を力づくで追い出す -選択3のA
 自衛隊の実力行使や個人/グループのテロ攻撃で、米軍基地を力づくで排除するという選択です。 しかしこれはどうも考えても、現実的ではありませんね。相手は世界最強の軍隊なのですから。
戦車が1対5で対峙する絵(イラスト)
P.13

 次に考えられるのは法的な手段です。 在日米軍基地は、日米安保条約(と日米地位協定)を法的な根拠として存在しています。日米安保条約を廃棄すれば、あるいは米軍基地は撤退してくれるかも知れません。 それを裏付ける発言もあります。
▼安保条約の廃棄、または改定によって、米軍基地を平和に返還してもらう。  -選択3のB
 しかしこれだけでは失敗する可能性もありますね。 たとえばキューバにある、グアンタナモ米軍基地。米国とキューバは長く敵対関係にありましたが、キューバにある米軍基地を米国は返還していません。

●参照:外務省HP日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約  日米地位協定
●「米国はどこに居ようとどこに基地を持とうと、それはそれらの国々から招かれてのことだ。世界のどの米軍基地でも撤去を求められているとは承知していない。 もし求められれば恐らく我々は撤退するだろう」と述べた(ダナ・ペリノ発言、「恒久的基地は世界のどこにもない」AFP通信電)。 (ウイッキペディア;日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約 より)
P.14


キューバのグアンタナモ米軍基地の絵(イラスト)
 もし日本が安保条約を廃棄すれば、米軍基地が返還される可能性はどの程度あるのでしょう?
 おそらくそれは米国次第でしょう。つまり、米国が自ら望まなければ難しいのではないでしょうか。 もし法的に無理やり米軍を追い出すことが可能だったとしても、その後の日米関係がどうなるのかも心配です。 この選択に実効性を持たせ、米国と良好な関係を保ちたいと願うなら、相当な工夫が必要なのです。
P.14-2

 では次に、その工夫について考えてみましょう。米国に自発的に基地を返還してもらうための工夫です。

米国民との協調


 米国に自発的に基地を返還してもらうためには、米国民(さらには世界の人々)からの支持が大切ですね。そこで以下の選択肢が生まれます。
▼米国なり世界の世論へと訴える。   -選択3のBの(1)

[注]
●米国なり世界の世論へ訴えることは、(規模の大小はあるにしろ)個人の選択で出来ることだ。ネットもパソコンの翻訳機能もあるのだから。
●米国の個々の政治家の発言を見ていると、まだ少数派だとはいえ、全世界に展開する米軍基地の必要性を疑問とする声も生まれて来ている。 日本から基地返還の声を上げることは、彼ら少数派の政治家への後押しとなるだろう。
P.15

国際会議の絵(イラスト)
 きっとたくさんの方が、日本全国に米軍基地があることをまだご存じではないでしょう。
P.15-2

 幸い米国は自由と民主主義とさらには公正さを大切にする国です。
自由と民主主義の旗の絵(イラスト)
 他国の軍地基地に首都圏まで包囲されていたら、独立国とは言えません。 米国を悪者にしないように細心の注意は払うにしても、「日本の自由と民主主義のために独立させてください」と米国世論へ働きかけることは、有効な方法でしょう。 そしてこの手法は世界が平和になって行けば行くほど、どんどんと効果的になって行きます。そこでこんな選択肢があることに気が付きます。
P.16


▼在日米軍基地返還のために、周辺地域の安定を図り積極的に世界を平和にしていく。-選択3のBの(2)
 周辺地域の安定も世界平和の実現も米国の世論への働きかけも、通り一遍の努力ではできません。すぐに効果が出なくても何十年でも訴え続けて行く覚悟が必要です。

 さて米国民の支持を取り付けるためには、米国民の気持ちになって考える必要がありますね。ここで米国民の気持ちを想像してみましょう。在日米軍基地を返還するにあたって、米国民はどんな心配をするか、何が障害になりうるのか?


[注] 平和の絵本の運動は「積極的に世界を平和にしていく」という、筆者の選択に他ならない。
P.16-2

経済的な問題

 まずは経済的な問題です。日本に基地を置くことで利権その他でバンバン儲かるとなれば、米国民の一部(利権関係者)は基地を返還したくはないでしょう。
金塊の絵(イラスト)
 でもお金の問題なら、お金で解決できるものです。
P.17

 日本に基地を置くことで、利権その他で儲かって笑いが止まらないという状況がもしあるとすれば、それに抵抗していく必要がありますね。 そのためには我々日本人の日ごろからの努力/覚悟が必要となります。さらには米軍基地を返還することに関して、少し移転費用に色を付ける、といったことも考える必要があるかも知れません。 次の選択肢が存在するでしょう。
▼在日米軍基地移転に伴う、広範囲な経済問題を積極的に解決していく。-選択3のBの(3)
 どうすれば米国が経済的に喜んでくれるのか、どこまで日本は払えるのか。この辺りは交渉事です。 米国はフェアネスを重んじる大国です。もしかしたら経済的な問題など無視して、大所高所の観点から撤退してくれるかも知れません。
P.17-2

 米国民の気持ちへの想像を続けましょう。

宗教的な問題

 次にあるのは、宗教的な錯覚の問題です。米国人の多くはキリスト教徒です。そして聖書には異教徒を敵視するかのような記述が数多くあります。 そんな記述を誤読して「日本人は異教徒という悪」と錯覚してしまう方がいらっしゃったら、どうでしょう? 
●ただ主ひとりのほかに、ほかの神々にいけにえをささげる者は、聖絶しなければならない。(出エジプト22:20 この引用は新改訳から。新共同訳では、22:19)
●あなたは彼らの神々を拝んではならない。仕えてはならない。また、彼らの風習にならってはならない。
P.18

これらを徹底的に打ちこわし、その石の柱を粉々に打ち砕かなければならない。(出エジプト23:24)
●それであなた方は、その地の全ての住民をあなた方の前から打ち払い、彼らの石像をすべて打ち壊さなければならない。 彼らの鋳物の像をことごとく打ちこわし、彼らの聖なる高きところをすべて滅ぼし尽くすように。(民数33:52)
●同じ母の子である兄弟、息子、娘、愛する妻、あるいは親友に、「あなたも先祖も知らなかった他の神神に従い、 これに仕えようではないか」とひそかに誘われても、その神々が近隣諸国の民の神々であっても、 地の果てから果てに至る遠い国々の神々であっても、誘惑する者に同調して耳を貸したり、 憐れみの目を注いで同情したり、かばったりしてはならない。
P.18-2

このような者は必ず殺さねばならない。(申命13:7-10 これは新共同訳より引用。新世界訳では6-9が対応。)
●・・・あなた方の知らなかった神々に付いて行くのであれば、呪いを。(申明11:28)
●その者が行って、他の神々を崇拝し-略-そのような男や女をあなたの門のところに引き出し、その者を石で石打にしなければならない。その者は死ぬのである。(申明17:3-5)
●なぜお願いするかと言えば、人を惑わす者、すなわち、イエス・キリストが人として来られたことを告白しない者が大ぜい世に出て行ったからです。こういう者は惑わす者であり、反キリストです。(ヨハネ第二 7)
P.18-3

 もちろん錯覚は錯覚にすぎません。日米間の交流を進めていくだけでも錯覚に働きかけることが可能です。 実際に会えば、相手が何か得体の知れない「悪」などではないと自然に実感するものです。 幸い両国の間には深い交流があり、「日本人は異教徒であり悪だ」という錯覚を持つ方は、もしまだいらっしゃったとしても減少しつつあるでしょう。
人間を悪魔だと錯覚する絵(イラスト)

[注]
● ただの人を悪魔だと思うことは錯覚です。この錯覚をしてしまう確率は、その人が善悪中毒であれば大変に高くなります。 逆に言えば、人々の善悪中毒へ働きかけることで、錯覚の危険を減らせます。 平和の絵本の運動は、上記「錯覚の危険に積極的に対応していく」という筆者の選択に他なりません (詳細は「善悪という怪物」をご覧ください)。
●宗教的な錯覚に関する参考絵本は、「私は悪い人間です」「愛と嘘」「愛と敵」オムニバス絵本「愛を命令しないで」「僕らは特別」「良い子にならなきゃ」「神と善悪」「宇宙の異教徒」など。
●この絵は「不安な初対面」から。
P.19

とはいえ錯覚の危険に積極的に対応していくという選択肢は当然、存在しています。
▼米国民の一部がまだ保持しているかもしれない、宗教的な錯覚・誤解 へ積極的に働きかけていく。-選択3のBの(4)





P.19-2

復讐の恐れ

米国民の気持ちへの想像を続けましょう。 次は第二次世界大戦の復讐への不安です。実はこれが一番の問題かもしれません。というのも先の大戦での民間人の犠牲者数は、日本は米国の数百倍です。
原爆の絵(イラスト)

[注]  第二次世界大戦の犠牲者によれば、民間人の犠牲者は米国1,700人 日本 500,000-1,000,000人。
P.20

 そして世界には「目には目を。歯には歯を」という、数千年も続く古い道徳律があります。
目には目を、の絵(イラスト)
 それに当てはめれば、「原爆には原爆を」となりますね。 困ったことに、日本は科学技術大国です。原発のおかげで大量の核兵器の材料、プルトニウムも持っています。人工衛星を打ちあげることも出来ます。 つまり日本はいつでもその気になりさえすれば、米国の都市を標的とする大陸間弾道ミサイルを作ることが可能です。

[注] 
●「目には目を」はハンムラビ法典の中にあります。
●「その気になりさえすれば」と書きましたが、これはあくまでも言葉の綾です。 日本は核拡散防止条約に加盟しており、 原子力の平和利用を定めた日米原子力協定も締結しています。 人工衛星打ち上げの技術とミサイルの技術が同じという訳でもありません。 核武装のためにはこうした問題点をクリアーしていくことが必要です。
以下、ご参考まで。日米原子力協定の第八条です。
1 この協定の下での協力は、平和目的に限って行う。
2 この協定に基づいて移転された資材、核物質、設備および構成部分並びにこれらの資材、核物質、 設備若しくは構成部分において使用され又はその使用を通じて生産された核物質は、いかなる核爆発装置のためにも、 いかなる核爆発装置の研究又は開発のためにも、また、いかなる軍事目的のためにも使用してはならない。
P.21

大陸間弾道ミサイルの絵(イラスト)
 はてさて「在日米軍基地を返還したら、原爆投下の復讐をされるかも」と米国民が心の片隅でわずかでも思ったら、 基地の返還をしてくれるでしょうか? いくら自由や民主主義のためでも「やっぱりやめておこう」となるのではないでしょうか。
P.21-2

 もちろん米国に復讐したいと願っている日本人はまず存在しないでしょう 。「目には目を」というのは、もともと日本文化ではないのです。 それでも問題は、それをどうやって米国民に信じてもらうか、です。
プルトニウムとロケットを背中に隠すという絵(イラスト)
 この米国民のある意味当然な不安に答えるためには、どのような方法があるでしょう?

[参考] 万一、あなたが米国への復讐をお望みでしたら、 絵本「愛する人が殺されたら-復讐の相手」をご一読頂ければ幸いです。
P.22

 米国民の不安にこたえるための選択肢です。
▼原爆への復讐など夢にも考えていないということを、事実をもって示す。-選択3のBの(5)
 もし原爆作成の手段を自ら封じることが出来れば、それは大変な説得力を持つでしょう。より具体的には次の3つとなるでしょう。
▼核兵器の作成につながる施設の全廃(原発廃炉。再処理工場の閉鎖など)。 -選択3のBの(5)のa
▼すでに手持ちしているプルトニウム/濃縮ウランの廃棄。 -選択3のBの(5)のb
▼同時に「日本は永久に核武装をしない」という宣言を行なう。-選択3のBの(5)のc

[注]
プルトニウムより以下引用; 「原子炉級プルトニウムでも核兵器の製造は可能であるが、不安定な原子炉級プルトニウムでは爆発装置の製造が兵器級プルトニウムに比べて困難であり、 兵器としての信頼性にも欠けるため、通常は核兵器に用いられることはない。 だが、原子炉級プルトニウムを高速増殖炉(日本には、常陽ともんじゅがある)に装填して原子炉の運転をすると、 その炉心の周囲にあるブランケットという部分で高純度の兵器級プルトニウムが産出される。」
再処理工場より以下引用;「再処理工場を持つという事は、IAEAの保障措置を受けていても、政治的、社会的にその可能性が皆無であっても、実態とは関わらず国際世論から核兵器開発疑惑を持たれる。 そのため日本は、日本国内を含む世界中の急進的な環境保護団体やマスメディアから、新たに核武装する可能性が高い国の上位にあげられている。」
P.23

 核兵器作成の手段を自主的に放棄し、核武装の放棄宣言を行なえば、米国が持っているかも知れない不安―いつか日本に原爆投下の復讐をされるのではないか―を消し去ることができます。 そしてこの選択は、原爆の被害を経験し福島の事故を経験した日本国民にとっては、それほど難しいものではありません。
原発事故の絵(イラスト)

[注]
●「日本国民にとってはそれほど難しい選択ではない」旨を書きましたが、それはあくまでも一般日本国民にとっての話でしょう。 日本にも米国にも日本の原子力産業で利益を得ている方々がいます。真偽は不明ですが、日本の原発の使用済み核燃料が米国の劣化ウラン弾の原料となっているという噂もあります(劣化ウラン弾 日本製などのキーワードで検索ください)。 また次ページで書く、核廃絶の流れを好まない方もいるでしょう。つまり(状況次第ではありますが)政策決定者にとっては、難しい選択なのかもしれません。
P.23-2

 また全世界へ与えるインパクトは巨大なものとなり、それは世界の核廃絶の流れを加速するでしょう。 しかしながら、この選択は原子力産業に関わっている方にとっては大きな痛みを伴います。 巨大な電力会社が倒産することを僕は望みません。大勢の人が働いているのです。以下の選択肢もあげておきます。
▼核関連施設の廃止が社会に与えるネガティブな影響を最小にする -選択3のBの(5)のd
 さてもう一つ、重要な選択肢が存在します。 前述のとおり宗教的な誤解から、「日本人は悪」という錯覚が存在している可能性があります。 この錯覚は狭義の宗教的誤解にとどまらず、先の大戦のいわば後遺症としても存在しています。
P.24

日本人は悪魔だという絵(イラスト)
 もし米国民の一部が、「日本人は本質的に悪だ、悪魔だ」という錯覚を保持していたなら、なかなか米軍基地の自発的な返還を期待することは難しいでしょう。 実際、米国の世論調査でも日米安保条約の目的は「日本の軍事大国化防止」49%、「日本防衛」12%となっているそうです。

[注]
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」より以下引用; 「1990年(平成2年)3月、在沖縄米海兵隊司令官ヘンリー・スタックポール(Henry C. Stackpole, III)少将は「米軍が日本から撤退すれば、すでに強力な軍事力を日本はさらに増強するだろう。我々は 『瓶のふた』 のようなものだ」と発言し、日本を抑止する必要があるとの見解を示した。 1999年(平成11年)のアメリカの世論調査では、条約の目的について「日本の軍事大国化防止」49%、「日本防衛」12%となった。」
●繰り返しになりますが、「他者を悪だ、悪魔だ」と錯覚する確率は、その人の善悪中毒の度合いによって大きく変化するものです。 平和の絵本では、善悪という怪物(=心理トリックの集合体)の支配から人々の意識を解き放つことで、世界を変えることを目指しています。
P.24-2

 ここから生まれるのが次の選択肢です。
▼日本国の「平和ブランド」を一層推進し活用する。-選択3のBの(6)
 弱者が常に強者の言いなりであればバカにされるものです。 同様に常に米国の言いなりになって日本が戦争協力をしていては「無原則である」としてバカにされるでしょう。 会社の上司と部下の関係を想像してみて下さい。
戦争をするから自衛隊を出せという絵(イラスト)

[注]
善悪という怪物(=善悪という言葉と一体化した、潜在意識に潜む心理トリックの集合体)の支配から人々の意識を解き放つことが出来れば、 「誰かが悪だ、悪魔だ」という錯覚は自然に消えるでしょう。弱者が強者の言いなりになっていても、です。
P.25

 これでは何百年間、米国の戦争に協力をし続けても、どれほど日本人の若者たちの血を流しても、「日本人は本質的に悪だ、悪魔だ」という錯覚を打ち破ることはできません。 そこで日本国が持つ平和ブランドを徹底的に利用するのです。この平和ブランドは現代日本が70年間育ててきたものに他なりません。
戦争に自衛隊は出しませんという絵(イラスト)
P.26

 「なんて日本人は公正で平和を愛する民族なんだ! 日本人が悪だというのは全くの思い違いだった。こんなに立派な人々を基地で抑え込むのはバカバカしい!」と思ってもらえたとすれば、基地の返還もよりスムーズに進むことでしょう。

 それを考えると米国(に限らず国連も含めて他国)の戦争にどこまで協力するのか、よくよく考えなければなりません。以下を意識的に選択する必要があるのです。

▼給油活動などの後方支援をどこまでするか・しないか。戦費は出すか・出さないか。国連や多国籍軍の活動に派兵するか・しないか。-選択3のBの(6)のa


[注]
●日本文化では他者への思いやり・気配りが重視され、交渉においても自己主張は避けられがちです。 しかしながら西洋の方を相手に、日本式の交渉をすればバカにされる可能性が大きいでしょう。正直で率直な自己主張がとても大切だと考えられているからです。 つまり、米国に言われるままに、(その気もないのに)戦争協力を続けてもバカにされるだけ、となるかもしれません。 (こうした異文化間の誤解については、絵本「リンゴ異文化騒動記」をご参照ください。)
●自己主張が大切だと書いたこととやや矛盾しますが、日米交渉は決して対等な土俵で行われるものではありません。 P.3~4で見てきた通り、日本の首都圏は米軍基地で囲まれています。 東京の空も米軍管理。米軍関係者は日本側のチェック無しで米軍基地から出入りできます。つまり理論的に米国はいつでも実力行使することが可能です。 一方で自衛隊はワシントンに基地を持ってはおらず、実力行使の方法を持ちません。 この圧倒的な立場の差を考えると、米国に逆らう「選択/自己主張」をすることは簡単ではありません。つまり絵本に記した選択は、状況次第では大変に難しい選択です。 誤解を避けるために申し上げますが、筆者は米国が実力行使をすると言っているのではありません。しかしながらその可能性を想像するだけで、 日本側に大きなプレッシャーが生まれてしまいます。(参考絵本「「銃口の前」
P.26-2

 とはいえ一切海外に派兵しないことには、マイナス面も存在します。たとえば戦火にあえぐ他国の人々を「見殺し」にすることにつながるような場合です。

 「お前ら日本は自国だけ平和ならそれで良いのか!」という批判を受けるかもしれません。あるいは戦場に取り残された日本人を海外から救出することも、派兵なしでは難しいこともあるでしょう。

 一方でもちろん、派兵などをしなくても国際貢献する道は無限に存在しています。

P.27

丸腰で国際貢献という絵(イラスト)
P.27-2

憲法問題

 さて平和ブランドといえば平和憲法ですね。 しかしながら現状、憲法を巡っての議論はかなり混乱しているようです。以下、憲法9条に関する意見を整理してみました。
[護憲派]
平和憲法のおかげで日本は戦後70年間、戦争をしないで済んだ。 平和憲法は日本の宝だ。世界へ平和憲法を輸出しよう! 集団的自衛権は違憲だ。

[改憲派]
押し付け憲法は日本人のものではない。憲法制定はGHQ占領時であり、そもそも無効だ。 日本が戦後70年間戦争をしなかったのは憲法のおかげではなく、自衛隊と安保条約(在日米軍基地)が日本を守ってくれたからだ。

P.28

非武装で日本が守れるか。憲法9条は非現実的だ。 集団的自衛権が違憲だというなら、そもそも自衛隊も違憲だろう。それを言わないのはご都合主義だ。 憲法を守って国が亡んだらどうするんだ?
 あなたは、どちらに賛成されますか? 実は僕はどちらの意見にも賛成しています。両者の意見は一つの物事を違う角度から見ているだけであり、本来、対立する意見ではありません。 ご説明しましょう。

 まず日本が冷戦時代も含めて他国に侵略されずに済んだのは、(他国の友情と)自衛隊と安保条約/在日米軍が日本を守ってくれたからであり、平和憲法のおかげではありません。


[注]2023.5記
 護憲論・改憲論の他に「憲法無効論」も存在します。 これは、上記改憲派の意見「憲法制定はGHQ占領時であり、そもそも無効だ」をより徹底したものといえるでしょう。以下、ご参考までに時系列を記します。

1945年8月15日 玉音放送(終戦記念日)
同年9月2日 休戦協定(降伏文書)調印 以降、日本国の主権制限
1946年~1948年 公職追放 (GHQの指令で特定の関係者が公職に就くことを禁止された。対象は20万人超)
1946年4月10日 第22回衆議院総選挙  前議員の多数が公職追放に該当して出馬を断念。当選議員の中にもその後に公職追放に該当するとの通知を受けて議員辞職した者がいた (参照;第22回衆議院議員総選挙)。
1947年5月3日 日本国憲法施行
1952年4月28日 サンフランシスコ平和条約公布 日本国の主権回復。また同日に日米安保条約が発効している。

以下、サンフランシスコ平和条約の第一条です。
日本国との平和条約
第一条
(a) 日本国と各連合国との間の戦争状態は、第二十三条の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。
(b) 連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。

P.28-2

 しかしながら、日本が米国の保護国の身分でありながら米国の戦争(朝鮮戦争・ベトナム戦争・湾岸戦争・イラク戦争など)に派兵しないで済んだのは、平和憲法のおかげでしょう。
 さらにこれについては、「米国に押し付けられた」ことがプラスになっている可能性があります。
憲法が禁じているので戦争は出来ませんという絵(イラスト)
P.29

 つまり、「占領者に押し付けられた、本来は無効な憲法」だからこそ、実質占領下の日本で利用価値があるのです。

 次に平和憲法の非武装・非戦の誓いについてです。これは素晴らしい理想であり、この理想を世界へ輸出することには僕も大賛成です。 世界中の国々が非戦を誓えば、それは現実となるでしょう。

 しかし今の時点で非武装とすることは確かに非現実的ですね(後述します)。

P.29-2

 それから違憲問題です。まず憲法9条の条文を見てみましょう。
1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 これを素直に読めば、集団的自衛権も自衛隊もどちらも違憲です。 合憲だとすることは法治主義に反し、ご都合主義であることは間違いがありません。 また憲法は本来、日本国なり日本国民のために存在するものです。憲法を守ることよりも、日本国や国民の命を守ることの方が、はるかに大切なのはいうまでもありません。
P.30

 このあたりの矛盾に関しては、僕自身は米国占領下のコストの一つといった理解をしています。そもそも他国に軍事基地に占領された国に、完全な法治主義・民主主義・国民主権などを期待する方が無理ではないでしょうか? それらの結構な「主義」は、占領軍が許す範囲でという条件付きのものです。 いかがでしょうか。護憲派と改憲派の意見は決して対立するものではないこと、ご理解いただけたでしょうか。
憲法が禁じているので戦争は出来ませんという絵(イラスト)
P.30-2

自主憲法

 平和ブランドの話に戻ります。 上記を見る通り平和憲法は日本の平和ブランドのために役立ってはいますが、同時に押し付け憲法であり、ご都合主義の源でもあり、決して完全なものではありません。 そこでより平和ブランドを強化するために、自主的に憲法を制定するという選択肢が浮上します。
▼平和主義を掲げた自主憲法を制定し、日本国民の意志を内外に示す。-選択3のBの(6)のb
 それは次のようなものでしょうか。中身については大いに議論を盛り上げたいものです。

[注]2023.5記
 この絵本は2015年秋に発表したものです。「自主憲法の中身に関して大いに議論を盛り上げたい」と書いたこともあり、 絵本の発表後、ネットで数十万円を掛けてこの絵本を広告し、 またメルアドの分かる衆参の国会議員数百人をはじめ、数千人の著名人他に本絵本をメールでご紹介しました。 結果、民間個人の方からわずかばかりの反応を頂きましたが、政治家の方からの反応は皆無でした。 この絵本への反応が無いからどうだということではありませんが、 過去8年間で(日本独立という視点からの)議論は全く盛り上がっていないというのが筆者の実感です。
 本絵本の最初に、現代日本は米国の実質的占領下かもとお話しています。また2022年度の日本の報道の自由ランキングは71位だそうです(ランキングの基準は未確認です)。
 はてさて報道の自由が少ない、実質的に占領下の国で、「大いに議論を盛り上げ、国民の意志を示し、 独立の選択を見据えた自主憲法を作成する」選択など、そもそも可能なのでしょうか。 ・・・不可能では無いにしても、その選択は相当に難しそうです。 お立場によっては大きなリスクもあるでしょう。
 何かブラックスワン(予期できない重大事)でも起きれば別ですが、相当に長い時間軸を前提に考える必要がありそうです。 (一方で、読者の方々がそれぞれのお立場や方法で議論を進めるという選択肢はむろん存在しています。)
P.31


1)日本国民は、国際平和を誠実に希求し、非武装・非戦をその理想とし、武力の行使は、自衛目的を除き、永久にこれを放棄する。
2)前項の目的を達するため、専守防衛を旨とし、攻撃型の戦力および核兵器は保持しない。他国からの持ち込みも禁止する。
 現状の平和憲法は米国が作ったものであり、「米国様が作った憲法の制約があって戦争は出来ません」という受け身のスタンスを超えるものではありません。 そこに日本国民の意志・主体性はなく、平和ブランドとしてはまだ弱いのです。対米交渉の言い訳に使用することはできますが、戦後70年も経てばその魔力も弱まります。
P.31-2

 さらに言えば自衛隊を違憲だと言わないのですからご都合主義であることは明らかであり、 そのご都合主義は結果的に「解釈改憲」の余地を生みます。解釈改憲を拡大して行けば、 憲法そのものが無意味なものとなります。

 しかし平和主義を掲げた憲法を日本国民の大多数が自主的に選択したなら、その時は、「いいえ、派兵はできません。それは日本国民の意志です。解釈改憲の余地などありません」と主張できます。 そしてそれは「だってあなたが押し付けた憲法ですから」よりも、はるかに説得力があるでしょう。

P.32

憲法は改正しました。僕らの意志で戦争には協力しませんという絵(イラスト)

[注]2023.5記 憲法無効論
●「初めから無効なものは改正しても無効」 ・・・そんな憲法無効論の立場に立てば、上記は「あなたが作った憲法はもうありません」となるでしょう。

●スジ論としてではなく、あくまでも対米独立の方法論の一つとして考えたとき、憲法無効論を声高に唱える事にはマイナス面がありそうです。 つまりそれを聞いた米国の一部の方は不快感・警戒感を持つかもしれません。ですのでその時期が来るまで無効論はむしろ(日本側の)心の中に秘めておくことかもしれません。 (むろんこれは必ずそうだという事ではなく、相手次第であり、力関係もあり、時と場合によることです。)

●こんなことを言うとお叱りを受けるかもしれませんが、無効論には大変に便利な面もありそうです。それは手続きが不要ということです。 「現行憲法を無効にする」あるいは「現行憲法を改正する」のは大変な手間であり時間も掛かりますが、「もともと無効なものを無効とする」ために必要なことは認めることだけです。 個人としては認めるだけ。国全体として考えれば、無効宣言でしょうか。つまり宣言一つで済む話です。
 ―それで何が便利なのか?
 筆者が考えるのは突然の独立という、いわば非常事態への対応です。実は最近、米国の中でも海外に展開する米軍基地は必要なのかという疑問を表明する政治家が出現しています (トランプ前大統領、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏等)。米国の国力も大きく低下しています。 つまり米国が米国の都合で在日米軍基地を突然閉鎖し撤退するという事態が生じるかもしれません。 その時、たまたまどこかの国が日本を侵略しようとしたら?
 ・・・そんな一刻を争う非常事態での国防を想定すると、(憲法9条の精神を体現し戦わずに国土も財産も差し出すという選択をされる方もいらっしゃるでしょうが)憲法改正では間に合いません。 現行憲法の無効宣言をすれば、とりあえず自衛隊に国を守ってもらう事がそれほど無理なく可能となります。
 逆に言えば、「米軍がいなくなったら、どうやって国を守るんだ!? すぐに憲法を変えろ!」 と焦らずとも済みます。 つまり、じっくりと議論を尽くすことが出来るでしょう。

P.32-2

返還方法のまとめ

 在日米軍基地返還のための選択肢をまとめます。

●米軍基地の返還は、力づくでは(軍事的にも、法律的にも)難しいだろう。
●米国との交渉では、米国を悪者にしないように細心の注意を払いつつ 、自由と民主主義のためであることを全面に出し、自主的・平和的な返還を促す。
●日本の「悪イメージ」を払拭する。そのために自主的な平和憲法制定・参戦拒否などで平和イメージを徹底的に推進する。
●核武装の手段を放棄し、米国民の一部が持つかもしれない、原爆の復讐への不安を払拭する。

P.33

 極端な言い方をすれば、現代日本は米国が70年前に力で打ち破り、そのまま軍事基地で抑え込んだ/保護した、異教徒の、異人種の国に過ぎません。

 それがどのような選択であっても、日本が国として確固とした意志を持つめには、国民一人一人が「今は他国の占領下/保護下だ」という自覚を持つことが必要です。 一部の傑出した政治家の存在だけでは独立など出来ません。

 一人の政治家が失脚しても、すぐに次の政治家が同じ政策を引き継いでいく。 国民もそれを強力にサポートしていく。日本国民がそんな覚悟を持てなければ、国家としての選択など出来るはずがありません。

P.33-2

 さらにいえば平和な方法は時間がかかるものです。何十年・何百年単位の長い時間が必要かも知れません。すぐに結果など出ないでしょう。世界中の多くの植民地が独立を勝ち取るまで何百年とかかったことを忘れないでください。

 一方で希望もあります。 平和に自主的に米国が在日米軍基地を日本へ返還することは、米国にとっても大変なイメージアップとなり、テロ対策として考えても、とても効果的です。 上記の努力は、そのまま世界平和へとつながるものです。決して無駄にはなりません。

P.33-3

国防

 さて米軍基地の返還を希望するなら、国防問題について考える必要がありますね。まず軍事的な緊張についてです。

軍事的な緊張

 周辺諸国から現代日本に関して「軍国主義の復活」といった懸念が示されることがあります。しかしながら現代日本は米国の実質的な軍事占領下です。他国の軍隊で占領された国の「軍国主義」というのは、意味をなしません。 つまり現代日本に関して軍国主義といった非難を言葉通りに受け取ることは出来ず、それは極めて政治的な言葉です。
P.34

自由人が囚人をからかう絵(イラスト)
P.34-2

 ご承知の通り、米国は建国の過程から(北米大陸の東海岸から西海岸へ)ずっと拡張し続けている国です。
米国の拡張の絵(イラスト)
 日本の周辺諸国から見れば、怖いのは「在日米軍基地」、つまりは米軍/占領者でしょう。日本/被占領者ではありません。
P.35

 第二次世界大戦以降だけを見ても、米国はほとんど常に世界中で戦争を続けています。
第二次世界大戦以降、米国が関わった戦争の世界地図の絵(イラスト)
 したがって在日米軍基地が撤退すれば、日本周辺の軍事的な緊張は、(軍事バランスの変化に伴う一時的な緊張の高まりはあっても)長期的には低下する可能性が高いと僕は予想しています。

[注]
●「だから米国が善だ/悪だ」ということではありません。「だから米国を怖がる国・人々が存在する」という話です。
●米国が関わった戦争の情報ソースは List of wars involving the United States
P.36

 とはいえこれは仮定の話であり、様々なプレイヤーが絡むことでもあり断言はできません。

 在日米軍基地が撤退することで、台湾と中国の間、 および韓国と北朝鮮の間の軍事バランスにはネガティブな影響が生じるかも知れません。 しかしながらそれは、(少し冷たい言い方になりますが)台湾なり韓国の問題であり、 日本が在日米軍基地の負担を無条件に受け入れるという話ではありません。

 国際関係は軍事に限るものではありません。 米国の保護国でなくなれば、日本は今のようには米国に気を遣わずに、どの国とも外交・経済・政治・文化など様々な局面で、軍事的な緊張を低めるための工夫を考え実行できるでしょう。


[注] 2023.5記
●中台問題は国共内戦に起源を持ちます。 「一つの中国」という原則も中華民国(台湾)、中華人民共和国(中共)双方が「我こそは中国の正当な政権である」として、もともと主張していたことです。 しかしながら現代では「台湾の独立を中国が牽制する」方向に意味合いが変化しているようです (台湾の独立を認めない中国の法律「反分裂国家法」/ 台湾の安全保障のための米国の法律「台湾関係法」)。
●台湾(特に独立派)にとっては、中国が掲げる「一つの中国」は安全保障上の脅威でしょう。 その一方で中国側は「台湾独立は我が国の安全保障上の脅威」と考えているかもしれません (独立台湾に米軍核ミサイル基地が出来たら、とご想像ください。 それは中国にとってのキューバ危機のようなものでしょう。 現在、台湾に米軍基地はありません)。
P.37

 日本は数千年間、在日米軍基地無しで国防を行なってきたのです。 拉致問題、北方領土問題、尖閣・竹島問題なども、現在の恐ろしく硬直的な外交だけではなく、硬軟使い分けたあの手・この手を使うことが出来るでしょう。

 例を挙げれば、北方領土の交渉に絡めてシベリアに核のゴミ捨て場を取得するとか、 パイプラインプロジェクト(ロシアからのエネルギー輸入)で有利な条件を獲得するとか、柔軟で総合的な交渉術です。

 ロシアとの関係が好転すれば、それは中国や北朝鮮との関係にもプラスの影響を与えます。国防の負担は大きく減ることとなるでしょう。

P.37-2

▼日本の自由な意志と発想で周辺諸国との交流を深め友好関係を促進し、国の安全を図る。-選択4
とはいえ必ずうまく行くという保証があるわけではありません。在日米軍が撤退した途端に、「お、チャンスだ。日本を占領しよう」などとトチ狂ったことを考える国が絶対に出て来ないとは言い切れません。

治にいて乱を忘れず。次は防衛力について考えてみましょう。


〔注〕国連憲章の 敵国条項の削除を目指すことも、国防・外交上の重要な選択でしょう。
P.37-3

防衛力の基本的な考え方

 まずは国民負担と遠距離攻撃力(他国を攻撃する能力)の関係です。 同じ防衛力を保とうとした場合、他国への攻撃力に比例して国民負担は小さいものとなります。 それは次のような図で表せるでしょう。
国民の負担と攻撃力の図
P.38

 周辺諸国が日本侵略を計画していると想像してみて下さい。

 もし日本に強い攻撃力があり、報復される可能性が高ければ、周辺諸国は侵略を思いとどまるでしょう。 その最たるものが核武装です。

 もし日本を侵略すれば、その報復で核ミサイルを自国の首都に打ち込まれるかもと思えば侵略など出来ません。

 一方でその逆のケースが専守防衛であり攻撃型兵器(長距離ミサイル、長距離爆撃機、攻撃型空母など。つまりは遠くを攻撃できるものです)を持たない場合です。攻撃力が無ければ、侵略国への報復攻撃は出来ません。遠くからミサイルなどで攻撃をされれば、やられっぱなしになるだけです。
P.38-2

専守防衛は侵略された時に迎え撃つだけですので、必然的に戦場は日本国内となります。侵略国とすれば日本からの報復も自国が戦場になる可能性も一切心配せずに、とても気楽に攻撃することが出来るのです。
戦場への近接度と攻撃力の図
P.39

 徴兵制の可能性についても同様です。攻撃力を持たずに防衛に特化すればするほど、防衛に必要とされる軍隊の規模は大きくなり徴兵制の必要が高まります。
軍隊の規模と攻撃力の図
一見、もっとも平和なイメージがある専守防衛が、もっとも難しいのです。 
P.39-2

 ここまで読まれた一部の読者の方は、「では出来るだけ攻撃的な軍事力を持てばいいじゃないか」とお考えになるかも知れませんね。 しかしながら話はそこまで単純ではありません。日本が持つ攻撃力は周辺諸国から見れば、攻撃される可能性に他なりません。 日本の攻撃力は軍拡競争へとつながる可能性があるでしょう。これについては比例関係が存在します。
軍拡競争の図
P.40

牢屋から出てきたという絵(イラスト)
P.40-2

 もう一つ押さえておかなければいけないのは、他国との軍事同盟の問題です。 同盟国が日本を防衛してくれれば、むろん日本の防衛力は高まるでしょう。そこには以下のような比例関係が存在します。
防衛力と軍事同盟の図
P.41

 これだけ見れば軍事同盟は魅力的です。軍事同盟で防衛力・抑止力が高まれば、その分、国民負担を減らせるでしょう。しかしながら一方で軍事同盟が相互条約であれば、日本は同盟国を防衛する義務を負います。 つまり他国の戦争に巻き込まれるリスクが高まります。
戦争リスクと軍事同盟の図
P.41-2

 同盟国の戦争に巻き込まれたくなければ、軍事同盟を結ぶ先は出来るだけ平和で軍事的な緊張が無い国を選ぶことが重要となります。 しかしながら、もめ事を抱えていない国はそもそも軍事同盟を結ぶ必要性がありません。 もめ事を抱えている国こそが軍事同盟を必要とするのです。
軍事同盟の必要性の図
P.42

 平和な国と無理に軍事同盟を結ぼうとすれば、条約の内容は日本にとって不利なものとなるでしょう。もめ事を抱えている国と軍事同盟を結ぶのはより簡単ですが、当然、戦争に巻き込まれる可能性が高まります。いつもテロに狙われている国と軍事同盟を結べば、日本もまたテロのターゲットとなってしまうのです。

 他国と軍事同盟を結ぶ場合は、どこまで価値観を共有できるか(経済体制だけではなく、先制攻撃や侵略をするのか、互いの文化を尊重するのか等も有るでしょう)・どこまで信頼できるかも大きな問題となります。 助けてくれるものと信じていて、いざという時に助けてもらえなければ何をやっているのか分かりません。

P.42-2

テロ・戦争の原因/善悪中毒について

 あなたは米国の軍事・外交政策を見て、「なんで米国はわざわざテロを増やすのだろう?」と感じたことはありませんか?  「あんなことをやっていたならテロが増えるのは当たり前じゃないか」と。 僕は米国民の中に次のような思考パターンがあると想像しています(心の中は見えません。あくまでも想像です)。

テロや戦争の原因は「悪」であるという絵(イラスト)

P.43

 そして悪をやっつけていると錯覚して、一般市民を傷つけ・殺しているのではないかと。 つまり、多くの米国民が以下のように無限に循環する錯覚に囚われている可能性があると考えています。

テロと戦争の「悪循環」の絵(イラスト)

 
P.43-2

 この場合、もし日本が米国とは異なる方法で世界平和に貢献したいという意志を示した場合、米国が日本の知恵に期待する可能性が存在します。

 つまり日本が自信に満ちて、「我々は軍事力以外の方法で世界平和を達成する」と宣言したならば、米国は大いに日本に期待して在日米軍基地の返還も意外にスムーズに行くかもしれません。

 なお上記、善悪の思考パターンの問題点については、本WEBの絵本集および善悪という怪物をご参照下さい。

P.43-3

 もし日本が米軍基地の返還を目指し米国の保護国から卒業すると選択するなら、国防をどうするのか、最低限でも次の事柄につき国民的な議論が必要となるでしょう。
▼国防の基本的な形をどうするのか? -選択5
▼国民負担と防衛力も勘案して専守防衛に徹するのか。どの程度、攻撃的な戦力を持つか。-選択5のA
▼徴兵制/国民皆兵についてはどうするのか。兵役拒否の代替策は?-選択5のB
▼軍事同盟を誰とどう結ぶか。結ばないか。-選択5のC
P.44

非武装

 非武装に関しては、どうでしょう。そもそも以下の選択肢はありうるのでしょうか?
▼日本を非武装とする。-選択5のD
 「非武装というのは非現実的である」という考え方が現代日本では支配的です。 しかしながら先の戦争の惨禍を体験された方の中には、非武装を強く主張される方もいらっしゃいます。 僕自身は非現実的だとは思っていません。 もし恒久的な世界平和が達成されれば武力など不要なものとなります。 つまり非武装こそがもっとも合理的で現実的な選択となるでしょう。 とはいえこれはあくまでも恒久的な世界平和が達成された後の話です。
P.44-2

 恒久的な世界平和を達成するためには、「戦争反対!」などといったお題目だけでは不足であり、テロ・戦争の原因をひとつずつ解決していく必要があるのです。

 例えば、いくら「夫婦喧嘩は悪だ!」「夫婦喧嘩反対!」「夫婦は、いつも愛し合わなければいけない!」と唱えたとしても、夫が浮気をすれば夫婦喧嘩はすぐに勃発するでしょう。

 逆に言えば、夫の浮気という原因が無ければ夫婦喧嘩は生じません。 テロ・戦争もまた原因があって生じるものです。

P.44-3

 善悪や愛の命令や過剰生産性の錯覚は、テロ・戦争の原因となるでしょう。 平和の絵本では、こうしたテロ・戦争の大元の原因を特定し、その解決を目指していますが、まだ現実の世界ではこうした錯覚が蔓延している状況です。 つまりテロや戦争の原因が現代世界に存在する以上、日本がテロや戦争のターゲットとなる可能性は決して低くはありません。

 米国の基地が返還され日本が非武装となった後に、「地域の安定のため」に周辺諸国の軍隊が日本に進駐してくるのでは意味がありません。 意味がないという以上に、それは戦争の可能性を高めるということです(例えば軍事的に空白地帯となった日本へ周辺諸国の軍が進駐し、陣取り合戦を始めることを想像して下さい)。

P.45

陣取り合戦の絵(イラスト)
 非武装という選択肢は未来のものであり、今はまだ時期尚早でしょう。しかしながらそれは非武装/世界平和という理想を諦めるということでは決してありません。我々平和の絵本もまたその夢を信じてコツコツと努力を続けているのです。 以下の選択肢を示して、この項を終わります。
▼恒久的な世界平和の達成を目指してテロ・戦争の原因を一つずつ解決して行く。-選択5のDの(1)
P.45-2

核武装

 次は核武装について考えてみましょう。 核兵器は安上がりで効果的な防衛方法です。核兵器は70年以上前の米国で実用化されたものであり、ローテクにすぎません。前述の通り、原発がありプルトニウム等を保持し、人口衛星を打ち上げることが出来る日本ならば、核兵器を搭載した大陸間弾道ミサイルを作ることも簡単です。日本は核拡散防止条約の加盟国ではありますが、強引に脱退することも出来ないことではないでしょう。

 核による報復の可能性を担保すれば、侵略されることはまずありません。 つまり在日米軍基地がいつ返還されても核兵器を持ちさえすれば、国防の問題の大半は解決します。

P.46

 それも安価に、です。徴兵制も不要です。 中国も南北朝鮮もロシアも米国も核武装をした日本に手出しをすることはありません。

 しかしながら前述のとおり、核武装の可能性を残して米国が在日米軍基地を返還するでしょうか?  核兵器を求める日本は米国にとって、とても恐ろしい存在ではないでしょうか。 核武装の可能性を持つ日本から在日米軍基地が撤退する可能性は、かなり小さいと僕は個人的に推測しています。 とはいえ僕の推測は間違っているかも知れません。以下の選択肢を上げておきます。

▼核武装をする。 -選択5のE

P.46-2

 むろん日本の核武装にはマイナス面も存在します。唯一の被爆国である日本が核武装をすることは、核廃絶といった理想から見れば大きな後退であり、世界中の人々を落胆させ世界平和を達成する日もまた遠ざかるかも知れません。

 しかしながら一方で、テロ・戦争の原因は核兵器という物体にあるわけではなく、核武装をしつつテロ・戦争の原因を解決していくという道も有り得るであろうことを申し添えます。

P.46-3

国土強靭化

 もし専守防衛を選択すれば、戦場は自国内となります。防衛戦略はそれを前提に作成する必要があります。
▼自国内が戦場となる想定で、国土を強靭化し、防衛戦略を作成する。-選択5のF
 以下、ざっと思いつくことをあげておきます。大いに議論を盛り上げて頂ければと思います。 

●原発といった危険施設を無くす/都市から離す/防衛する。 ●要塞化(離島、戦略拠点。あるいは日本国土そのもの) ●防空壕/核シェルターの拡充。 ●高速道路の出入り口を増やし、アクセスを線から面へ。

P.47

●大都市の一極集中から地方への分散。食料・エネルギーなどの地産地消。●ガスマスク/ヨウ素/医薬品/武器/食料/水などの備蓄と配布。 ●軍事訓練/救命訓練。 ●地雷/機雷の活用(これらは移動しないので防衛型の兵器と考えられる。ただし放置すれば事故の原因となるので無力化の方策も必要)。 ●EMP(電磁パルス)攻撃への対策。 ●サイバー攻撃への対策。 ●少子化対策(兵隊数の確保)。

 ちなみに国土強靭化は自然災害対策とも多くの点で共通します。優先順位を考えながら長期的な取り組みをすることが必要でしょう。 また地方活性化は国防に資するだけではなく、国民生活の向上・経済活性化にも直結するでしょう。

P.47-2

非致死性兵器

 非致死性兵器とは、相手を死傷せずに無力化する兵器のことです。

 日本を侵略してくる敵兵であろうと個々の兵士は命令で動いているだけです。 死傷させずにすめばそれに越したことはありません。

 敵兵を気絶させて武装解除するなり、敵の戦車を故障させるなり出来れば防衛目的は達成されます。 人を死傷しない兵器は殺人に伴う精神的なダメージが無く、使う方も気が楽です。 敵の恨みを買わず憎しみの連鎖を避けることもできます。 領海侵犯などでも外交関係の無用な緊張を避けることが出来るでしょう。


[注]
●参考;非致死性兵器  電磁パルス(EMP)マイクロ波(指向性エネルギー兵器)
P.48

 また同じ兵器を輸出するのでも、非致死性兵器の輸出に特化すれば(兵器であることに変わりはないので、輸出先・方法など検討する必要はあるでしょうが)、それは日本のイメージアップになり、何より犠牲者を減らすことが出来ます。 以下、選択肢です。
▼非致死性兵器の研究開発を積極的に進めて、従来の殺傷型の兵器と置き換えていく。-選択5のG
笑気ガス地雷で兵士が笑っている絵(イラスト)

[注]
●日本は化学兵器使用禁止条約を批准しています(化学兵器の定義は第二条で定められています)。
●プロパガンダについて 2023.5記
近現代の戦争にはプロパガンダがつきものです。プロパガンダの主目的は自陣営が善で敵陣営は悪であると、出来るだけ多くの人に信じてもらうことにあります。 これは、世界中で実に多くの人々が善悪(の錯覚)で支配されていることを反映したものでしょう。 実際、敵陣営を悪と出来るかどうかで、戦争の勝敗そのものまでが変わってしまうのです。 そこで真実は二の次に、都合で決められた善悪をサポートする嘘があふれてしまいます。 仮に上記絵本のように非致死性の笑気ガスの類を使用した場合でも、「日本が毒ガスで何十万人も殺した」と敵側は宣伝するかもしれず、そうなったとしても全く不思議ではありません。 国防のためにそうしたプロパガンダに備える体制を作る必要があることは言うまでもありませんが、嘘に嘘で対抗するのは寂しいものです。 より本質的な対策は、人々を善悪(の錯覚)の支配からそもそも解き放つことでしょう。言うまでもなく、たかだか人と人との争いを、神と悪魔の戦いだと思うことは錯覚です。 善悪という怪物(=心理トリックの集合体)を退治することは、人々の嘘を減らすことにつながり、相互理解へとつながり、平和への道を開くこととなるのです。
P.48-2

シーレーン

 シーレーン(海上交通路)の防衛についても考えてみましょう。 日本は多くの重要資源を輸入に頼っています。海賊その他の妨害行為で船の安全な航行が出来なくなれば、それは重大な存立の危機となるでしょう。 その海上航路の防衛をどうするのかは国防上、重要な課題です。
▼シーレーンを誰がどう防衛するのか。-選択5のHの(1)
海賊船の絵(イラスト)
P.49

 海賊の発生地域に地場産業を興すといった援助を行い、海賊行為の発生そのものを防止するといった対策をするのか。

 シーレーンの防衛は自衛隊が中心となって行うのか。 
 それともシーレーンの防衛は適宜、友好国へ外注するのか。自衛隊と諸外国との連携で防衛するのかといったことです。


 さらには、次の選択肢もシーレーン防衛との絡みで考えることが出来るでしょう。

P.49-2


▼エネルギー輸入先の多様化。新エネルギーの開発に取り組み、エネルギー・食料自給率をアップ。-選択5のHの(2)
 前述のロシアとのパイプラインプロジェクトも、シーレーンの防衛/エネルギー調達の多様化という国防問題として考えることが出来ます。
 ここまで国防の様々な選択肢について、見てきました。

 合気道の達人の塩田氏は「合気道で一番強い技は自分を殺しに来た相手と友達になること」と言われたことがあるそうです。 友情以上の国防は存在しないことをもう一度強調し、国防に関する項を終わります。

P.50

日本の未来を予測する

 最後に日本の未来に関して、日本人が選択するであろう、代表的な二つのシナリオをご紹介します。 二つのシナリオのどちらが善か悪かではありません。ただの未来予測です。

「選択をしない」という選択をした場合

 この可能性が現状では最も大きいかも知れません。 日本国民が、保護国であるという現状に関して、特に選択らしい選択をしなかった場合です。
何も選択しない →当面は楽。現状維持 →政治・文化・社会システムなど全ての面で一層の米国化 →米国と軍事一体化 →米国の敵は日本の敵となり、ある時点から日本国内でテロが頻発
P.51

→人口が密集する日本におけるテロ被害は甚大なものに →原発を続けプルトニウムも保有し、日本は核武装の潜在的な能力を保有 →従属的な戦争協力と核武装の可能性で「悪なる日本が原爆の復讐をするかも」という米国の不安が持続 →何百年たっても在日米軍基地は返還されない →日本の民主主義・法治主義・国民主権は米国(または米国に怯えゴマをする日本のリーダーたち)の許す範囲に限定 →国益・国民生活は後回し →周辺諸国からはバカにされ続ける →日本国民の自尊心は低く抑えられ社会は陰湿で抑圧されたものへ →少しずつ日本国は衰退
衰退した日本の絵(イラスト)

[注]
「少しずつ日本国は衰退」と書きましたが、もちろんこれで終わるという意味ではありません。 禍福は糾える縄の如し。「このままじゃダメだ。変えよう」と思えば、人々の選択は自ずから変わります。
P.51-2

選択をした場合

 次は日本人が意識的に選択をする場合です。現代日本人がもし覚悟を決めて選択することを決意したなら、色々と紆余曲折はあるでしょうが、結局は以下のようになるのではと予想しています。
一切のタブーを捨て国民的な議論を展開 →米国からの独立/自主防衛という未来を選択 →「国民が日本のリーダーたちをサポートしなければ実現は不可能」と覚悟 →対米関係が悪化しないように細心の注意を払いつつ、自己主張は毅然と →米国の不安(日本人は悪/原爆の復讐)へ積極的に対応 →原発廃炉・プルトニウム放棄・核武装放棄宣言 →平和ブランドの強化 →専守防衛の自主平和憲法を制定
P.52

→攻撃型の兵器は持たない →非効率な専守防衛を可能とするため国民皆兵・徴兵制・国土強靭化などに関して国民的な議論 →自分の国は自分で守る共通認識 →米国は日本の自主独立と平和希求の決意に驚き日本を尊敬 →米軍基地を自主的に返還 →他国との軍事同盟は結ばない。国連活動への派兵も行わない →軍事力以外の方法で世界の平和を推進 →周辺諸国との交流を深め地域を安定化 →核保有国との戦力バランスでは日本が不利 →不利は甘受。不利なまま毅然と →世界が日本を尊敬し見習い核軍縮が進む →日本が中心となって恒久的な世界平和を達成
世界の人々が世界平和の達成に貢献した日本に感謝して日の丸を振っているという絵(イラスト)

[注]2023.5記
繰り返しますが、(これらの)選択をすることが正しいことだと言っているのではありません。物事にはタイミングがあるものです。 その時期も来ていない時に無理に選択をしたとしても、成功するものではありません。準備をする/待つ、というのも選択です。
P.52-2

 以上です。
あなたは、どんな選択をされますか?



P.53

文中選択肢一覧









選択1 米国の保護国のまま
A 日本を進んで米国化するか否か。どの分野を米国化し、どの分野に関しては、米国化の圧力に抵抗するか。
B どの分野に関しては、日本の国益を守り、どの分野に関しては妥協するか。
C 米国の戦争に、拒否も含めて、どれだけ積極的に協力するのか。参戦の原則、判断をどうするのか。 
選択2 日本をアメリカ合衆国51番目の州へ
選択3 在日米軍基地返還。実質的/軍事的に独立
A 在日米軍基地を力づくで、追い出す。
B 安保条約の廃棄、または改定によって、米軍基地を平和に返還。
(1) 米国の世論へと訴える。
(2) 在日米軍基地返還のために、周辺地域も含めて世界を平和にする。
P.54











選択3 B (3) 在日米軍基地移転に伴う、広範囲な経済問題を積極的に解決する。
(4) 宗教的な錯覚・誤解へ働きかける。
(5)    原爆の復讐という恐怖心に働きかける。
a 原発・再処理工場の閉鎖。
b 濃縮ウラン、プルトニウム廃棄。
c 核武装放棄宣言。
d ネガティブな影響を最小に。
(6)  「平和ブランド」の利用
a 後方支援/戦費負担/国連のPKO活動などはどうするのか。
b 平和主義を掲げた自主憲法の制定。
P.54-2





選択4 周辺諸国との交流を深め友好関係を促進
選択5 国防の基本的な形
A 専守防衛に徹するのか、どの程度、攻撃的な戦力を持つか。
B 徴兵制/国民皆兵についてはどうするのか。兵役拒否の代替策。
C 軍事同盟を誰とどう結ぶか。結ばないか。
非武装にするのか。
(1) 恒久的な世界平和の達成を目指して、テロ・戦争の原因を一つずつ解決する。
E 核武装するのか。
F 国土を強靭化。防衛戦略の作成。
G 非致死性兵器の開発・利用。
(1) どうシーレーンを防衛するのか
(2) エネルギー/食料自給率をアップ 調達先の多様化。
P.55

あとがき

 もし、あなたがこの絵本に示された種々の選択が重要なことだと思われるなら、他の方にもご紹介の労を賜りたくお願いいたします。

 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。

www.j15.org

©Jun Togo 2015
P.56




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平和の絵本

世界平和の絵本集(WEBトップ頁)
クイックツアー-QT
お母様へ(子供を心の病から守る)-QT 悩み落ち込む方へ-QT イジメ・虐待問題-QT 政治・社会問題-QT 戦争と平和-QT 国を憂う方へ-QT

絵本集
本当に悪いのは誰? 世界を巡る攻撃命令 正しいことって何? 攻撃命令無制限
殴れるよ 見下せるよ 誤魔化せるよ
良い子にならなきゃ(地獄の恐怖) やるかやられるか パブロフの犬(条件反射の心理学)
子供を犯罪者に(少年犯罪の原因) 教育マシン(子供の教育に) どっちだ?(孤独の心理)
悪いことは悪い 二重に隠れて 大事な議論 正義の味方
サングラス(理想主義の罠) 出ていて引っ込んでいるもの 認識のパターン(絵本集)
終わりの無い物語(憎しみの連鎖) 私は悪い人間です(罪と祈り)
魔法のメガネ(いじめや戦争) 見えない危険(軍拡の心理) 怯える人々(恐怖で狂暴に) 負けるものか(意志が弱い方へ)
善悪と愛憎 愛と嘘(嘘と偽善) 愛と敵(虐待へ) 愛を命令しないで(オムニバス絵本)
神と善悪 悪人さん、ありがとう 失敗し続ける方法(オムニバス絵本) バカ自慢-絵本集 怒りと憎しみ -絵本集
悪と罰(罰の心理) ある星の飲酒運転(酒酔い運転防止) 罰とイジメと自殺のロンド 罰と恐怖(絵本集)
愛する人が殺されたら―復讐の相手 復讐の相手-Ⅱ 想像という現実(連作絵本) 嫌な気持ちになる絵本 それぞれの深い望み
嵐と湖(心の悩みへ) 待って(焦りと不安へ) 国破れて
生と死(絵本集) お金と経済(絵本集) 民主主義(絵本集)
リンゴ異文化騒動記 僕らは特別(被害者意識) 一輪の花(原爆の廃絶) 差別について(絵本集) 日本独立の選択

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